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メモハック

宅建の「聞き流し」は効くのか——音声で一問一答を回す条件と、通勤30分で回せる枚数

公開: 16メモハック開発者

宅建の勉強を通勤時間に回したくて「聞き流し」の音声を流している人は多いのですが、流した内容はよく知っているのに、選択肢で隣の数字と並べられると迷う、という状態になりがちです。原因は音声という媒体ではなく、答えの前に自分で思い出す間がないことにあります。Karpicke と Roediger(2008)の実験では、繰り返し読むだけの条件は1週間後の再生がほとんど伸びず、思い出す練習を続けた条件だけが大きく伸びました(https://doi.org/10.1126/science.1152408)。聞き流しは、この「読むだけ」を耳でやっているのと変わりません。この記事では、音声で宅建の一問一答を回すときに効く3つの条件、通勤30分で回せる枚数の試算、音声に向かない範囲、音声向けのデッキの作り方をまとめます。筆者らが運営するiPhoneアプリ「メモハック(MemoryHack AI)」の耳勉モードを例に挙げますが、条件はどの音声教材にも当てはまります。

この記事の要点

  • 答えの前に思い出す間がない聞き流しは、繰り返し読むのと同じ種類の学習で、時間をおいたテストでの伸びは小さい(Karpicke と Roediger, 2008)。
  • 読むか聞くかで理解度に差は出ておらず(Rogowsky ら, 2016)、音声が弱いのではなく、想起がないことが弱い。
  • 問題のあとに答えを言う間を置くと、音声は想起練習になる。読み返しに対する想起練習の差は、1週間後の再生で約1.5倍だった(Roediger と Karpicke, 2006)。
  • 問題文20〜30字、答えが数字程度のカードなら、通勤30分は1.0倍速で約180枚分、1.5倍速で約230枚分(仮定を置いた試算)。
  • 図表・計算・権利関係の事例問題は音声に向かない。宅建業法の要件と法令上の制限の数値が音声の主戦場になる。
  • 音声向けのカードは、問題文を短く、数字を答えの側に置き、1枚に事実を1つ。取り違えやすい数値のペアは交互に並べる。

「聞き流し」で宅建の知識は定着するのか

読み返しと同じ定着の仕方になります。聞き流しの音声は、問題と答えが続けて流れるか、解説文を朗読しているだけで、聞き手が答えを作り出す場面がありません。Callender と McDaniel(2009)は教科書の文章を1回読む条件と2回読む条件を比べ、後のテストの成績にほとんど差が出ないことを報告しました(https://doi.org/10.1016/j.cedpsych.2008.07.001)。10の学習法を比べた Dunlosky ら(2013)のレビューでも、再読は有用性が低い部類です(https://doi.org/10.1177/1529100612453266)。

音声そのものが劣っているわけではありません。Rogowsky ら(2016)は同じ文章を、読む条件、オーディオブックで聞く条件、両方を同時に使う条件で比べ、直後にも2週間後にも理解度テストに有意な差が出なかったと報告しています(https://doi.org/10.1177/2158244016669550)。聞き流しが弱いのは、耳だからではなく、思い出していないからです。

「流した内容はよく知っている」という感覚も、これと矛盾しません。Murre と Dros(2015)によるエビングハウスの再現研究では、記憶の残り方は覚えている割合ではなく、再学習にかかる時間がどれだけ節約されたかという節約率で測られています(https://doi.org/10.1371/journal.pone.0120644)。何度も聞いた条文は、聞けばすぐ分かる状態にはなります。しかし本試験では、手がかりのない状態で数字を出す必要があります。聞き流しが作るのは、聞けば分かる状態までです。

音声が効くのは、答えの前に思い出す時間があるときだけ

問題を聞いたあと、答えが流れる前に自分で答えを言う。この数秒があるかどうかで、同じ音声が読み返しにも想起練習にもなります。Roediger と Karpicke(2006)は、文章を読み返す条件と、読んだあとに思い出す練習をする条件を比べ、直後のテストでは読み返しが有利に見えたのに、1週間後の再生では想起練習の側が約1.5倍の成績になったと報告しました(https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x)。音声で再現すべきなのは、この「読んだあとに思い出す」の側です。条件は3つあります。

条件音声での実現方法根拠
答えの前に思い出す問題と答えの読み上げの間に、答えを声に出すか頭の中で確定させる数秒の間を置くRoediger と Karpicke(2006)、Karpicke と Roediger(2008)
間隔を空けて戻す同じデッキを1日に何周もせず、数日空けて戻る。目安は本番までの残り期間の10〜20%Cepeda ら(2008)
似たものを交互に並べる取り違えやすい数値のペアを同じデッキに交互に置き、聞き分けさせるKornell と Bjork(2008)、Brunmair と Richter(2019)

メモハックの耳勉モードは、1つ目の条件を仕組みとして持っています。デッキのカードを「問題 → 約2秒の間 → 答え」の順に端末の音声合成で読み上げ、答えのあと約1秒おいて次の問題へ自動で進みます。再生速度は1.0倍・1.25倍・1.5倍・2.0倍から選べますが、速度を上げても縮むのは読み上げだけで、思い出すための約2秒と次までの約1秒は変わりません。

ただし、間があるだけでは足りません。答えの読み上げを聞いて「知っていた」と感じる使い方は、再認であって想起ではありません。答えが流れる前に数字を口に出すか、口に出せない場所なら頭の中で一つに決めてください。言えなかったカードは、降りたあとに画面で開いて確かめます。思い出す練習の手順はアクティブリコールのやり方で扱っています。

通勤30分で回せる枚数は何枚か(試算)

問題文が短く答えが数字程度のカードで、1.0倍速なら約180枚分、1.5倍速なら約230枚分です。次の仮定を置いた試算であり、実測ではありません。読み上げの長さは文字数と端末の音声合成の設定で変わり、問題文や答えが長ければ枚数は半分以下になります。

区間仮定1.0倍速1.5倍速
問題の読み上げ20〜30字の問題文約4秒約2.7秒
思い出す間速度によらず固定2秒2秒
答えの読み上げ数字と制度名程度約3秒約2秒
次の問題までの間速度によらず固定約1秒約1秒
1枚あたり上の合計約10秒約7.7秒
30分(1,800秒)で1,800秒÷1枚あたりの秒数約180枚約230枚

1.0倍速は 4+2+3+1=10秒、1,800÷10=180枚。1.5倍速は読み上げの7秒が7÷1.5≒4.7秒に縮み、固定の3秒を足して約7.7秒、1,800÷7.7≒234枚です。

この枚数を、同じデッキの繰り返しで埋めないでください。30枚のデッキを30分で6周するのは、間隔を詰める側の使い方です。Cepeda ら(2008)は、最適な復習間隔が本番までの期間に対して、1週間後のテストで約20〜40%、1年後のテストで約5〜10%と、期間が長いほど比率としては小さくなると報告しています(https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02209.x)。本番が数か月先なら、残り期間の10〜20%程度が一つの目安です。通勤30分には、宅建業法の要件・法令上の制限の数値のように別々のデッキを続けて流し、同じデッキには数日空けて戻るほうが合います。

通勤で流すときの制約が一つあります。メモハックの耳勉モードの再生は、アプリを開いている間だけです。画面を消したとき、自動ロックで画面が消えたとき、他のアプリに移ったときは停止し、再生ボタンで止まったカードの問題から再開します。電車やバスで、画面をつけたまま手に持って使う想定です。消音スイッチが入っていても再生されるので、イヤホンを挿してマナーモードのまま使えます。歩きながらの使用は、安全のためにおすすめしません。

音声に向かない宅建の範囲はどこか

図表を見ないと成立しない問題、計算問題、権利関係の事例問題の3つです。いずれも、問題を聞いてから答えを出すまでに、耳で保持しておく情報が多すぎます。

範囲音声に向かない理由代わりの扱い
用途地域ごとの建築制限の表、建蔽率・容積率の一覧表の位置関係で覚える知識で、1行ずつ読み上げると行どうしを比べられない画面か紙で表を白紙から再現する
税額・面積・容積率の計算問題数字を複数保持して演算する必要があり、耳では途中の値が落ちる紙で解き、税率や控除額の数字だけを音声に切り出す
権利関係の事例問題登場人物と契約の関係を保持しながら当てはめる問題で、問題文自体が長い過去問で演習し、判例の結論と要件のキーワードだけを音声に切り出す

逆に、宅建業法の要件・期間・数字と、法令上の制限の数値は、答えが条文の文言で一つに決まり、問題文を短くできるので音声に向いています。「宅建業の免許の有効期間は」と聞いて「五年」と答える形です。どの範囲を穴埋め化するかの整理は宅建の暗記カードは「作る」より「回す」で、法令上の制限の数値が本番で入れ替わる問題への対処は法令上の制限の数値を定着させる回し方で扱っています。

音声で回すための宅建デッキの作り方

目で見るカードをそのまま読み上げると、問題文が長すぎて答えにたどり着く前に集中が切れます。次の4点を守って作ります。

問題文は短く、制度名と区域名を手がかりに残す

問題文は20〜30字を目安に切り詰め、答えを絞る手がかりだけを残します。目で見れば読み飛ばせる前置きも、耳では最後まで聞かなければなりません。「都市計画法における開発許可について、市街化区域内で開発行為を行う場合に許可が必要となる面積の下限は」ではなく、「開発許可、市街化区域、面積要件は」で足ります。ただし制度名と区域名は削りません。法令上の制限の数値は、制度と区域の組み合わせで決まるからです。

数字と期間は答えの側に置く

問題文に数字を入れず、答えの側に数字を置きます。「市街化区域で千平方メートル以上の開発行為に必要なのは」という問い方は、数字を聞いて制度名を答える形で、数字を出す練習になりません。本番で問われるのは「この制度・この区域なら数字はいくつか」なので、その向きで作ります。答えは「千平方メートル以上」のように単位まで書いてください。「1,000」だけだと読み上げでは「せん」としか聞こえず、面積なのか金額なのかが落ちます。

1枚に事実を1つ

「開発許可の面積要件は、市街化区域では千、非線引き区域では三千、都市計画区域外では一万」のように1枚に複数の数字を詰めると、2秒の間では答えを確定できません。区域ごとに別のカードに分けると、どの区域で間違えたのかも記録に残ります。

取り違えやすい数値のペアは交互に並べる

法令上の制限では、似た制度で似た数字が隣り合います。たとえば都市計画法の開発許可の面積要件は市街化区域で千平方メートル以上、国土利用計画法の事後届出は市街化区域で二千平方メートル以上で、取り違えやすい組み合わせです(2026年9月時点。数値は改正で動くので、必ず最新の条文で確認してください)。このペアは、同じデッキの中で交互に出るように並べます。Kornell と Bjork(2008)は、似た対象を交互に学習するとまとめて学習するより見分けの精度が上がることを示し(https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02127.x)、Brunmair と Richter(2019)のメタ分析は、その利得が見分けるべき対象どうしがよく似ている場合に大きいと報告しています(https://doi.org/10.1037/bul0000209)。制度名を聞いて数字を出す練習が、そのまま見分けの練習になります。

条文の文言から作る材料には、メモハックが公開している宅建 条文穴埋め(無料サンプル)の33問が使えます。e-Gov法令検索の条文をそのまま問題文にし、空欄の位置だけを選んだもので、画面で読むページなので、音声で回すには自分のカードに写して問題文を短く切り詰めます。メモハックでテキストを撮影して作ったカードも、生成された問題文がそのまま読み上げられます。撮影から問題ができるまでおよそ30秒ですが、音声向けの短さにはなっていないことが多いので、生成後にカードを編集して切り詰めてください。生成にはAIの誤りが含まれる可能性があるため、数字はテキストと条文で確かめてから回します。

正直な限界

  • 通勤30分で約180枚という数字は、問題文20〜30字、答えが数字と制度名程度という仮定を置いた試算で、実測ではありません。読み上げの長さは端末の音声合成の設定でも変わります。
  • メモハックの耳勉モードの再生はアプリを開いている間だけです。画面を消したとき、自動ロックがかかったとき、他のアプリに移ったときは止まります。読み上げは端末の音声合成(iOSの読み上げ機能)で、ナレーターによる録音音声ではありません。読み上げられるのは問題と答えで、解説は画面で確認します。
  • 無料プランでは、耳勉モードの再生は各デッキの先頭3枚までです。デッキ全体を音声で回すには有料プランが必要です。
  • 引用した研究は宅建試験そのものではなく、大学生などを対象にした文章や絵画の学習課題の実験です。Rogowsky ら(2016)も文章の理解度を測った実験で、数字の想起を音声で練習した実験ではありません。
  • 出題の間隔を決めるSM-2は、SuperMemoの開発過程で生まれた経験則で、最適性が実験で確かめられたものではありません。本記事は学習法の解説であり、合格を保証するものではありません。

よくある質問

宅建の聞き流しは意味がないのですか?

答えの前に自分で思い出す間がない聞き流しは、読み返しと同じ種類の学習で、時間をおいたテストでの伸びは小さいと考えてください。Karpicke と Roediger(2008)の実験では、繰り返し読むだけの条件は1週間後の再生がほとんど伸びず、思い出す練習を続けた条件だけが大きく伸びました。音声でも、問題のあとに答えを言う間を置けば、想起練習として成立します。

通勤30分で一問一答は何枚くらい回せますか?

問題文20〜30字、答えが数字と制度名程度の短いカードなら、1枚あたり約10秒(問題約4秒、思い出す間2秒、答え約3秒、次までの間約1秒)で、30分は約180枚分です。1.5倍速では読み上げだけが縮んで1枚約7.7秒、約230枚分になります。仮定を置いた試算で、問題文や答えが長いカードでは半分以下になります。

宅建で音声に向かない範囲はどこですか?

図表を見ないと成立しない問題、税額や面積の計算問題、権利関係の事例問題です。表の位置関係や登場人物の関係を耳だけで保持するのは負荷が高く、想起が失敗しやすくなります。音声には、答えが条文の文言や数字で一つに決まる宅建業法の要件と法令上の制限の数値を回し、図表・計算・事例は画面と紙で扱ってください。

音声で回すためのカードはどう作ればよいですか?

問題文は短く、制度名と区域名のように答えを絞る手がかりを残し、数字や期間は答えの側に置き、1枚に事実を1つだけにします。目で見れば一瞬で分かる長い問題文も、耳では最後まで聞かないと答えにかかれません。取り違えやすい数値のペアは同じデッキに交互に並べると、聞き分ける練習になります。

参考文献