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メモハック

赤シートアプリの選び方——スマホの設定・写真で隠すアプリ・AI穴埋めの違いと、効く使い方

公開: 約24分メモハック開発者

スマホで赤シート勉強をする方法は、大きく3つあります。iPhone・iPadの「色合い」設定で画面全体を赤くする方法、写真やPDFの赤字・マーカー部分を隠すアプリ、そしてAIが教材の写真から穴埋め問題を作るアプリです。教材にすでに赤字が入っているなら前の2つ(暗記用マーカーで塗った教材なら写真やPDFを隠すアプリ)、手を入れていない範囲を準備なしで回したいなら3つ目が向いています。ただ、どれを選んでも、覚えられるかどうかを分けるのは道具より使い方です。18の研究を統合したメタ分析では、頭の中で答えを思い出す練習の効果は小さく、答え合わせをしない条件ではほとんど見られず、答えを口に出したり書いたりする方法のほうが上回りました(Yu ら, 2025、https://doi.org/10.1007/s10648-025-10024-4)。この記事では、いわゆる赤シートアプリを含む3つの方法の違いと選び方、「赤シートは効果がない」と言われる理由と効く使い方を、研究と具体例で整理します。AIが穴埋めを作るタイプの一例として、筆者らが運営するiPhone・iPadアプリ「メモハック(MemoryHack AI)」も取り上げます。この記事は、メモハックの運営者が書いています。

宅建の勉強中なら、登録なしでブラウザから宅建の条文穴埋め33問を試せます。AIが作った問題ではなく、条文の文言をそのまま使って空欄を1か所ずつ作ったもので、答えは「答えを見る」を開くと表示されます。

この記事の要点

  • スマホで赤シート勉強をする方法は、端末の「色合い」設定、写真・PDFの赤字やマーカーを隠すアプリ、AIが穴埋め問題を作るアプリの3つ。赤字の教材なら前の2つ(暗記用マーカーで塗った教材なら写真・PDFを隠すアプリ)、手を入れていない範囲なら3つ目が向く。
  • iPhone・iPadの「色合い」は無料でアプリも要らないが、画面全体の色を変える設定で、赤シートのための機能ではない。隠れ方は教材の文字の色と設定の強さで変わる。
  • AIが穴埋めを作るタイプは、自分のページの赤字を隠すのではなく、AIが書いた問題文の中の語を隠す。空欄にする語もAIが選ぶ。
  • 頭の中で思い出すだけの練習の効果は小さく(g = 0.23)、出版バイアスを補正するとほぼ0という分析もある(Yu ら, 2025)。効果が出ていたのは答え合わせがある条件(g = 0.59)で、ない条件ではほとんど見られなかった(g = 0.04)。
  • 頭の中で思い出す練習を読み直しと比べると、1日未満のテストではむしろ読み直しが上で、1日以上あとのテストで逆転した(出版バイアス補正前の推定)。「赤シートは効果ない」と感じやすい理由の一つと考えられる。
  • 答えを口に出す・書く方法は、頭の中だけより効果が大きかった(差は g = 0.17)。めくる前に答えを声に出すか書き、めくって答えで確かめる。

スマホで赤シート勉強をする方法には、どんな種類があるのか?

端末の設定で画面を赤くする方法、写真やPDFを隠すアプリ、AIが穴埋めを作るアプリの3つです。違いは「どこを隠すかを誰が決めるか」と「隠すための準備がどれだけ要るか」に集約されます。

ここでいう赤シート勉強は、答えを隠した状態で思い出し、めくって確かめる勉強のことです。紙の赤シートは参考書の赤字の印刷を隠すのに使われるほか、ピンク・オレンジ・黄色のインクで書いた文字(三菱鉛筆の案内)や、緑や青の暗記用マーカーで塗った文字、オレンジの暗記用ペンで書いた文字(コクヨの案内)も隠れます。黒い文字の横に線を引いただけでは隠れません。次の表は、紙の赤シートを基準に、スマホで使える3つの方法を並べたものです(2026年9月時点、筆者の整理)。

方法隠れるもの・準備弱いところ
紙の赤シート(基準)印刷の赤字、暗記用のペンやマーカーで書き込んだ・塗った語。道具代のみ持ち歩ける量に限りがある。復習の時期は自分で管理する
端末の「色合い」設定iPhone・iPadの画面に表示した教材の赤字など。設定を一度変えるだけで、無料・アプリ不要画面全体の色が変わる。赤シートのための機能ではなく、隠れ方は文字の色と設定の強さ次第
写真・PDFを隠すアプリ色で検出した部分や、自分で追加した隠し。撮影や取り込みが要る。無料の範囲はアプリによる印刷の色味や照明で隠れ残りが出ることがある。隠しを手で置くと準備に時間がかかる
AIが穴埋めを作るアプリAIが書いた問題文の中の、AIが選んだ語。撮影かPDFのページ選択だけ。無料の範囲はアプリによる問題は文だけになり、図表は付かない。誤りが入りうるので、元のページとの照合が要る

AIが穴埋めを作るアプリは、メモハックのほかにもあります。どこを隠す仕組みかは、各アプリのApp Storeの説明で確かめてください。

写真やPDFの赤字を隠すアプリは、どう選べばいいのか

App Storeで「赤シート」と検索すると、写真やPDFの赤字を隠すアプリが複数見つかります。たとえば「i-暗記シート」は、参考書の赤文字を写真に撮るだけで画像解析によって隠せ、PDFの取り込みにも対応すると説明しています。「赤シートアプリ - カクセル」は、写真やPDFの赤字や青字を隠すほか、隠す部分を自分で追加できると説明しています(いずれも2026年9月28日時点のApp Storeの説明による。筆者はメモハックの運営者で、これらのアプリを評価・比較したものではありません)。Androidでは、Google Playで同じように検索できます。

どのアプリでも、無料の範囲で自分の教材を1ページ取り込み、次の点を試してから決めてください。

  • 自分が使っているペンやマーカーの色が隠れるか。隠す強さを調整できるか。
  • 隠れ残った語や、隠れすぎた語を手で直せるか。
  • PDFをそのまま取り込めるか。一度に何ページまで扱えるか。
  • 隠しを1か所ずつめくれるか。思い出せなかった箇所に印を付けて、あとで回せるか。
  • 無料で使える範囲と、課金の条件。

iPhone・iPadの「色合い」で赤字を隠す手順

アプリを入れずに試せるのが、iPhone・iPadのアクセシビリティ設定です。Appleのサポートページに沿うと、手順は次のとおりです(2026年9月28日確認)。

  1. 設定アプリを開き、「アクセシビリティ」→「画面表示とテキストサイズ」→「カラーフィルタ」の順にタップする。
  2. 「カラーフィルタ」をオンにして、「色合い」を選ぶ。
  3. スライダで色相を赤の側に寄せ、強さを上げる。

Appleはこの設定を、色や光に敏感な人がディスプレイ全体の色合いを変えるための機能として案内しています(Apple サポート)。赤シートの代わりとしての効き方は案内されていないので、隠れ方は手持ちのPDFや写真で確かめてください。設定は画面全体にかかるので、勉強が終わったら元に戻してください。

自分の教材には、どの方法を選べばいいのか?

教材にすでに赤字や暗記用マーカーが入っているかどうかで、まず分かれます。入っているなら色で隠す方法、入っていないなら、自分で手を入れる時間があるかどうかで、自分で隠すかAIに穴埋めを作らせるかを決めます。

次の表は、教材の状態ごとに向いている方法をまとめたものです。

こんな教材・状況なら向いている方法理由
重要語が赤字で印刷されたテキスト紙の赤シート。PDFや写真なら「色合い」設定か、赤字を隠すアプリ印刷の色をそのまま使え、準備が要らない
暗記用マーカーで塗った、またはオレンジのペンで書き込んだ教材紙の赤シート、写真・PDFを色で隠すアプリ自分が選んだ語がそのまま隠れる
隠す語を自分で選びたい、図や表の位置ごと覚えたい暗記用マーカーで塗る、写真・PDFに自分で隠しを置くアプリ選ぶ作業も学習になりうる。ページの見た目も残る
手を入れていない範囲が広く、準備の時間がないAIが穴埋めを作るアプリ準備が撮影だけで済む。ただし空欄はAIが選ぶ
英単語や定番の用語で、既製の問題で足りる問題が最初から入っているアプリ作る必要がない
Androidやパソコンで勉強する紙の赤シート、または使う端末に対応したアプリメモハックと「色合い」は、iPhone・iPad向け

隠す語を自分で選ぶ作業にも、意味がある可能性があります。線を引いたり塗ったりする作業そのものを測った研究ではありませんが、Pan ら(2023)の実験では、自分で作った暗記カードは既製のカードより48時間後のテストで有利でした(https://doi.org/10.1037/mac0000083)。AIが作った穴埋めは既製のカードの側に近く、この上乗せはそのままでは得られません。作る時間と引き換えに何を得て何を失うかは、一問一答を自作する時間は何と引き換えなのかで詳しく扱っています。

迷ったら、教材の状態で決めてください。赤字やマーカーがすでに入っている教材にAI穴埋めを使うと、自分が選んだ語ではなくAIが選んだ語が隠れるので、塗ったマーカーが活きません。逆に、手を入れていない範囲に色で隠すアプリを使うには、先に塗ったり書き込んだりする時間が要ります。

赤シートで隠して覚えるのは、効果がないのか?

頭の中で思い浮かべるだけの練習は、研究全体では効果が小さく、確かとは言えません。効果が出ていたのは、思い出したあとに答えを確かめた場合です。答えを声に出すか書いてからめくり、答えで確かめる使い方なら、効果が確かめられてきた想起練習の形に近づきます。

赤シートでしていることは、答えが見えない状態で思い出し、めくって確かめることです。口や手を動かさずに頭の中で答えを思い出す練習について、Yu ら(2025)は18の研究(参加者2,560人)を統合したメタ分析で、その効果を調べました(https://doi.org/10.1007/s10648-025-10024-4)。次の表は、そのうち赤シートの使い方に関係する結果を抜き出し、筆者が赤シートに読み替えたものです。

比べた条件(Yu ら, 2025)効果の大きさ(g)赤シートに読み替えると
頭の中で思い出す練習と、何もしない・別の作業・読み直しなどの比較条件0.23。出版バイアスを補正した推定は 0.00頭の中で思い出すだけの練習の効果は、全体として小さく不確か
答え合わせがある場合と、ない場合0.59 と 0.04めくって答えを確かめる工程を省くと、ほとんど効かない
読み直しと比べて、1日未満のテストと1日以上あとのテスト−0.22 と 0.35その日のうちに試すと読み直しより劣って見え、上回ったのは1日以上あとのテスト
答えを口に出す・書く方法と、頭の中だけの方法の差0.17(出力する側が上)めくる前に声に出すか書く

1行目の 0.23 は小さな効果で、著者ら自身が、効果の出た研究ほど公表されやすい「出版バイアス」の兆候を報告しています。それを補正する分析では、効果はほぼ0と推定されました。ただし、補正の方法にも限界があるので結果を読みすぎないように、と著者らは注記しています。

2行目の差について、著者らは、答え合わせで答えにもう一度触れること自体が効果の多くを説明している可能性があると述べています。赤シートなら、めくって答えを確かめる工程がこれに当たります。

3行目は、「赤シートは効果ない」と感じやすい理由の一つだと筆者は考えています。読み直しと比べると、全体では差がほとんどなく(g = 0.06)、1日未満のテストではむしろ読み直しのほうが成績が良く、1日以上あとのテストで逆転しました(いずれも出版バイアスを補正する前の推定です)。勉強したその日のうちに覚えたかを試す限り、隠して思い出す勉強は読み直しより劣って見えやすい、ということです。

4行目の出力の差について、著者らは次の説明が結果と合うとしています。頭の中だけで思い出すと、答えを最後まで出し切る前に探すのをやめてしまいやすく、声に出したり書いたりすると、答えを出し切るまで続けることになる、という説明です。Smith ら(2013)の4つの実験のように、頭の中だけでも出力する条件と同程度の効果が出た研究もあります(https://doi.org/10.1037/a0033569)。それでも Yu ら(2025)は、研究全体としては出力する側が上回ると結論づけ、頭の中で思い出す練習は出力の代わりにはならないと述べています。出力する形の想起練習については、思い出した内容を書き出すテストを繰り返した条件が、読み直しを繰り返した条件を1週間後の成績で上回ったという代表的な実験があります(Roediger と Karpicke, 2006、https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x)。

答えが長いときほど、この差は無視できません。Tauber ら(2018)は、大学生が用語の定義を覚える2つの実験で、定義を打ち込んで思い出した条件が、頭の中で思い出した条件や読み直した条件より、2日後の成績で上回ったと報告しています(頭の中で思い出した条件との差を統合した効果量は d = 0.43、https://doi.org/10.1016/j.jarmac.2016.10.004)。赤シートで隠れているのが1語でも、それが要件や定義の一部なら、隠れていない前後の文まで含めて言えるかを確かめてください。

一つ注意があります。Yu ら(2025)自身が注記しているとおり、教材を手元に置いたまま自分のペースで思い出し、詰まったら見るやり方(赤シートはこれに近い方法です)は、覚える時間と思い出す時間を実験者が分けた研究の手続きとは違います。表の数字は赤シートそのものを測ったものではなく、使い方を考える手がかりとして読んでください。学習中の手応えが当てにならない理由は「覚えた感」はどこから来るのかで、思い出せなかった問題の扱いは思い出せなかった問題は無駄なのかで扱っています。

AIが作った穴埋めを赤シートで回すときは、何を確かめればいいのか?

隠れている語がどの文から来たのかを、元のページで確かめられるかどうかです。AIが作るタイプでは問題文そのものがAIの書いた文なので、赤シートで覚える前に、元のページとの照合が要ります。

どのアプリにも当てはまる確認点と、メモハックの場合を並べると次のとおりです(2026年9月時点)。

確かめることメモハックの場合
元のページを見返せるかできる。答えを開くと出る「根拠」から、問題を作ったページの画像を開ける
問題文は教材の文そのままかそのままではない。問題文はAIがページの内容をもとに書き、文脈を補うことがある
誤りを直す・消す手段があるかある。「この問題はおかしい」から、修正・削除・報告ができる
隠す語を自分で選べるか一部だけ。問題文と答えは書き換えられるが、ページ上で隠す場所は選べない
図や表も覚えられるかできない。カードに図は付かず、図表を見ないと解けない問題は作らないようAIに指示している

「根拠」に何が表示されるかも、正確に書いておきます。問題を作ったページの画像は、答えを開いたあとに見返せます。そのうえで、AIが写真から書き写した一文は、端末が写真の文字を読み取り、同じ文があると確かめられたときだけ表示され、「この端末で写真を読み、同じ文があることを確認しました」と添えられます。確かめられなかった文は表示しません。また、ページの画像を全画面で開くと、端末が答えの位置を読み取れたページでは、答えの語が隠れた状態で始まり、タップでめくれます。読み取れなかったページでは隠れず、隠れる位置がずれることもあります。

確かめられた文だけを表示するのには、理由があります。開発中の社内の確認では、AIが原文から書き写した77文のうち4文で意味が変わっていました(条件と例は写真から問題を作るAI暗記アプリの選び方に書いています)。同じ77文を、端末が写真と照らし合わせて確かめられた文だけに絞ると、表示されたのは58文で、意味が変わった4文はすべて表示されない側に入りました。表示された58文のうち2文は、小さい「っ」と「つ」を読み分けられず、原文と一致していませんでした。いずれも2026年9月14日に当時の生成モデルで、撮影した写真ではなく画面上で画像にしたページを使った小規模な確認で、一般化できる数字ではありません。

つまり「根拠」は、問題文や答えが正しいことの保証ではなく、元のページに戻る近道です。覚える前に、隠れている語と、その前後の条件を表す語(以上・未満・各・遅滞なく など)が、元のページと一致しているかを見てください。

メモハックで赤シートを使う流れは、次のとおりです。

  1. テキストのページを撮影するか、フォトライブラリの写真やPDFのページを選ぶ。
  2. AIが問題文・答え・解説を作る。空欄は1問につき1つ。
  3. 出題モードを変えていなければ、赤シートで始まる。変えた場合は、次回もそのモードで始まる(4択を選んでいても、期限の来た復習は赤シートで始まる)。
  4. 答えを思い出してから、問題文をタップするか「めくる」ボタンで答えを開き、解説と「根拠」を確かめる。
  5. 「もう一度」「難しい」「普通」「簡単」の4段階で自分を評価すると、次に出題する日が決まる。

まだ問題を作っていないうちは、ホーム画面から、同梱のサンプル問題(条文などの原文をそのまま使った穴埋め)を無料枠を使わずに解けます。選んだ試験の問題が同梱されていない場合は、別の科目のものになります。撮影の前に、赤シートの操作だけを試すこともできます。

赤シートで効果を出すには、どう回せばいいのか?

めくる前に答えを言い切り、めくったら前後の条件まで厳しく採点し、正解した語も間隔を空けて戻し、ときどき教材を閉じて白紙で試すことです。どれも、紙でもアプリでも同じように使えます。

  1. めくる前に、答えを最後まで言い切る。 声に出せる場所なら声に出し、出せないなら紙に書くか、アプリの入力欄に打ち込みます。メモハックの「入力」モードでは空欄の語を打ち込み、その場で正誤が判定されます。「たしか◯◯だった気がする」で止めてめくると、思い出す練習というより、答えを見て確認する作業に近くなります。
  2. めくったら、空欄の語だけでなく前後の条件まで照らす。 「以上」「未満」「各」のような語が合っているかも見ます。AIが作った問題なら、「根拠」から元のページも確かめます。
  3. 「だいたい合っていた」は不正解に数える。 Dunlosky と Rawson(2012)は、大学生が定義を打ち込み、自分の答えを採点しながら覚えた実験で、採点が正確だった学生ほど2日後の成績が高かったと報告しています(https://doi.org/10.1016/j.learninstruc.2011.08.003)。メモハックでは、めくったあとに4段階から自分で選びます。前後の条件まで言えなかったときは「もう一度」を、言えたが迷ったときは「難しい」を選んでください。
  4. 正解した語も、間隔を空けて戻す。 Rawson と Dunlosky(2011)は、大学生533人が概念を学んだ3つの実験から、初回に3回正答するまで思い出し、その後、間隔を大きく空けて3回学び直すことを、学生向けの目安として示しました(https://doi.org/10.1037/a0023956)。アプリの復習スケジュールがこの回数どおりに組まれているわけではないので、目安として読んでください。
  5. ときどき、教材を閉じて白紙で試す。 赤シートでは、ページの位置や前後の文が手がかりとして目に入ります。ときどき教材を閉じ、覚えた内容を白紙に書き出してください。思い出す練習そのものの手順は、アクティブリコールのやり方にまとめています。

宅建の条文で試すと、何が見えるのか

宅建業法39条1項(手付の額の制限等)を例にします。原文は次のとおりです(e-Gov法令検索から2026年9月に取得した、2026年4月1日施行の版)。

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二を超える額の手付を受領することができない。

「十分の二」を隠すと、問題は「…代金の額の[ ]を超える額の手付を受領することができない。」になります。この形では、「手付」「代金の額」という前後の語が強い手がかりになり、何度か回すと、すぐに「十分の二」と出てくるようになります。一方、本試験は四肢択一式の筆記試験で(試験実施機関の案内)、同じ内容が、たとえば数字を入れ替えた選択肢の正誤として問われることがあります。空欄に語を入れられることと、数字が入れ替わった文を見抜けることは、同じ力とは限りません(筆者の解釈です)。赤シートで「十分の二」が言えるようになったら、次の2つを足してください。

  • 誰が売主のときの規定か(宅地建物取引業者が自ら売主となる場合)を、隠れていない部分も含めて声に出して言う。
  • 同じ「十分の二」が出てくる38条(損害賠償額の予定等の制限)と並べて、どの規定の数字かを言い分ける。

過去の試験問題は、試験実施機関の宅建試験の問題及び正解番号表で公開されています。宅建で条文の数字をどう覚えるかは、宅建の暗記カードは「作る」より「回す」で一覧にしています。

正直な限界

  • メモハックの赤シートは、撮影したページの赤字やマーカーを隠す機能ではありません。隠れるのは、AIがページの内容をもとに書いた問題文の中の語です。問題文は教材の文と同じとは限らず、空欄にする語もAIが選びます。
  • 元のページの画像の上で答えが隠れるのは、端末が答えの位置を読み取れた場合だけで、隠れる位置がずれることもあります。
  • AIの生成には誤りが含まれる可能性があります。「根拠」に表示される一文は端末が写真と照らし合わせたものですが、問題文・答え・解説そのものの正しさを保証するものではありません。元のページと照らしてから覚えてください。
  • カードには図や表が付きません。図表を見ないと解けない範囲は、紙や写真に隠しを置く方法のほうが向いています。
  • メモハックはiPhone・iPad向けで、Android版とWindows版はありません。問題の生成には通信が必要で、選んだページの画像は問題作成のために送信されます。無料で生成できる回数には上限があり、料金や機能は2026年9月時点のものです。
  • 「色合い」はAppleが赤シート用として案内している機能ではなく、隠れ方は教材の色と設定によって変わります。紹介したほかのアプリの内容は、各アプリのApp Storeの説明によるもので、筆者が確かめたものではありません。
  • 紹介した研究は、赤シートやメモハックを使って行われたものではありません。Yu ら(2025)が統合した研究の手続きは、覚える時間と思い出す時間を実験者が分けたもので、自分のペースでめくる赤シートとは条件が違います。同じ論文は、頭の中で思い出す練習の効果が出版バイアスによって大きく見積もられている可能性も示しています。本文の社内の確認も、当時のモデルで行った小規模なもので、一般化できる数字ではありません。本記事は学習法の解説であり、合格を保証するものではありません。

よくある質問

赤シートアプリは無料で使えますか?

iPhone・iPadの「色合い」設定は無料で、アプリも要りません。アプリは製品ごとに無料で使える範囲が違うので、App Storeの説明と課金項目を確かめてください。メモハックは登録なしで使い始められ、2026年9月時点では、問題の生成が初回ギフト5回+毎日3回まで無料です。写真1枚、またはPDF1ページで1回を使い、作った問題を解いたり復習したりするだけなら回数は減りません。上限を超えて生成するときの条件は、料金にまとめています。

PDFの教材にも赤シートをかけられますか?

PDFの赤字をそのまま隠したいなら、PDFを画面に表示して「色合い」設定を試すか、PDFを取り込んで赤字を隠せるアプリを選んでください。メモハックはPDFに隠しを掛けるアプリではなく、選んだページから穴埋め問題を作るアプリです。一度に取り込めるのは5ページまでで、1ページにつき生成1回分を使います。PDFのファイルは端末の中で画像に変換され、選んだページの画像が問題作成のために送信されます。

AndroidやWindowsのパソコンでも使えますか?

メモハックはiPhone・iPad向けのアプリで、Android版やWindows版はありません。この記事で紹介した「色合い」も、iPhone・iPadの設定です。Androidで教材の赤字を隠したいなら、Google Playで「赤シート」と検索し、写真やPDFの赤字を隠すアプリを選んでください。ブラウザからは、登録なしで宅建の条文穴埋め33問を試せます。

自分でマーカーを引いたところだけを隠せますか?

メモハックではできません。空欄にする語はAIが選び、写真の上で好きな場所を選んで隠す機能はありません。作られた問題文と答えは後から書き換えられ、問題を自分で追加することもできます。自分で塗ったマーカーや書き込んだ文字をそのまま隠したいなら、紙の赤シート(緑や青の暗記用マーカー、オレンジやピンクのペンの場合)か、写真やPDFの隠す部分を自分で選べるアプリのほうが向いています。

答えを頭の中で言うだけでも効果はありますか?

頭の中で言うだけの効果は、はっきりしません。18の研究を統合した Yu ら(2025)のメタ分析では、頭の中で思い出す練習は比較条件より成績を上げました(g = 0.23)が、答えを確かめなかった場合はほとんど効果がなく(g = 0.04)、出版バイアスを補正すると効果はほぼ0になるという分析も示されています。答えを口に出す・書く方法は、頭の中だけの方法を上回りました(差は g = 0.17)。定義のように長い答えでは、打ち込んで思い出した学生のほうが2日後の成績が高かったという実験もあります(Tauber ら, 2018)。声を出せない場所では紙に書くか、せめて答えを頭の中で最後まで言い切ってからめくり、答えで確かめてください。

参考文献

  1. Yu, Y., Zhao, W., Li, A., Shanks, D. R., Hu, X., Luo, L., & Yang, C. (2025). Is covert retrieval an effective learning strategy? Is it as effective as overt retrieval? Answers from a meta-analytic review. Educational Psychology Review, 37, 52. https://doi.org/10.1007/s10648-025-10024-4
  2. Smith, M. A., Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2013). Covert retrieval practice benefits retention as much as overt retrieval practice. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 39(6), 1712–1725. https://doi.org/10.1037/a0033569
  3. Tauber, S. K., Witherby, A. E., Dunlosky, J., Rawson, K. A., Putnam, A. L., & Roediger, H. L. (2018). Does covert retrieval benefit learning of key-term definitions? Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 7(1), 106–115. https://doi.org/10.1016/j.jarmac.2016.10.004
  4. Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
  5. Dunlosky, J., & Rawson, K. A. (2012). Overconfidence produces underachievement: Inaccurate self evaluations undermine students' learning and retention. Learning and Instruction, 22(4), 271–280. https://doi.org/10.1016/j.learninstruc.2011.08.003
  6. Rawson, K. A., & Dunlosky, J. (2011). Optimizing schedules of retrieval practice for durable and efficient learning: How much is enough? Journal of Experimental Psychology: General, 140(3), 283–302. https://doi.org/10.1037/a0023956
  7. Pan, S. C., Zung, I., Imundo, M. N., Zhang, X., & Qiu, Y. (2023). User-generated digital flashcards yield better learning than premade flashcards. Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 12(4), 574–588. https://doi.org/10.1037/mac0000083

公式資料(2026年9月28日確認。いずれも公式サイト上のページで、ページ名とサイト名を記しています)

  • Apple サポート「iPhone、iPad、iPod touchで画面表示とテキストサイズの設定を使う」support.apple.com
  • 三菱鉛筆 お客様相談室「赤シートで隠せるインクを知りたい」mpuni.co.jp
  • コクヨ「チェックル」製品ページ kokuyo.com
  • App Store「i-暗記シート」「赤シートアプリ - カクセル」の説明 apps.apple.com
  • e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第三十八条・第三十九条 laws.e-gov.go.jp
  • 不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」「宅建試験の問題及び正解番号表」retio.or.jp