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行政書士試験、復習の枠をどの科目に配るか——足切りと忘却速度から決める再訪の配分

公開: 15メモハック開発者

過去問は3周した、模試の判定も悪くない。それなのに直前期に入ると、覚えたはずの行政手続法の期間や民法の要件が本番で出てこない——行政書士試験の学習相談で最も多いのが、この詰まりです。原因は覚え方そのものより、限られた復習の枠をどの科目にいくつ配ったかにあることが少なくありません。記憶の残り方は復習の総量より間隔の置き方に強く依存し、Cepeda ら(2008)は1,350人を超える参加者を対象に、最適な間隔がテストまでの残り期間に応じて変わることを示しました(https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02209.x)。この記事では、公表されている出題構成と合格基準、そして忘却と想起の研究から、復習の枠の配り方を決める手順を示します。

復習の枠を先に決めると何が変わるのか

変わるのは、科目を落とす判断を事前にできることです。学習順序を決めても、1日に確保できる復習の回数は有限なので、後半では必ずどれかの科目が回らなくなります。枠を先に決めておけば、その「回らない科目」を偶然ではなく設計として選べます。

順序と配分は別の意思決定です。順序は「何から手をつけるか」、配分は「同じ週に何回ずつ再訪するか」を決めます。社会人受験生の場合、崩れるのはほぼ常に後者です。学習順序そのものの組み立ては行政書士試験の学習順序で扱っているので、本記事は順序が決まった後の「枠の配り方」に絞ります。

配分を決めるための材料は3つです。得点ブロックの大きさ(配点)、下回ると不合格になる線(足切り)、そして放置したときに落ちる速さ(忘却リスク)。以下、この順に見ていきます。

行政書士試験の配点はどこに偏っているのか

偏っているのは法令等科目です。一般財団法人行政書士試験研究センターの公表資料によれば、出題は法令等46題・基礎知識14題で、法令等のうち5肢択一式が40問160点を占めます。合格には試験全体の基準に加えて科目別の基準も満たす必要があり、片方だけを伸ばす戦略は成立しません。

次の表は、公表資料で確認できる出題構成をまとめたものです。

区分出題形式出題数確認できる配点
法令等5肢択一式40問160点
法令等多肢選択式・記述式(記述式は40字程度)6題公表資料で要確認
基礎知識択一式14題公表資料で要確認

そして次の表が、合否の判定軸です。

判定軸基準
法令等科目満点の50パーセント以上
基礎知識科目満点の40パーセント以上
試験全体満点の60パーセント以上

公表資料には、試験問題の難易度を評価して補正的措置を加えることがある旨も記載されています。配点の内訳や基準は年度によって変わりうるため、最新の基準は公式発表で確認してください。

配分上の含意は明確です。法令等の5肢択一式が最大のブロックである一方、基礎知識には満点の40パーセントという下限があるため、枠をゼロにはできません。基礎知識は「伸ばす対象」ではなく「割らないための固定枠」として先に確保するのが、逆算としては素直です。

復習しないと落ちる知識はどう見分けるのか

見分ける軸は2つです。ひとつは、その知識が意味のつながりで支えられているか、それとも数字や期間のように恣意的な対応関係かどうか。もうひとつは、本番で求められるのが選択肢の再認か、白紙からの再生かです。後者に寄るものほど、多くの枠を必要とします。

ここで注意したいのが、忘却をどう測るかです。Ebbinghaus 以来よく引かれる忘却曲線は「覚えている割合」の直接測定ではなく、再学習にかかる時間がどれだけ短縮されたかを見る節約率の測定でした。Murre & Dros(2015)はこの節約法による再現を行い、元データと類似した結果を得たと報告しています(https://doi.org/10.1371/journal.pone.0120644)。この指標の読み方は忘却曲線と節約率で詳しく扱っています。

実務上の意味は、「思い出せない=ゼロに戻った」ではない、ということです。一度作った記憶は、再学習のコストを下げた状態で残っている可能性がある。だから配分の判断は「まだ覚えているか」ではなく「本番の形式で再生できるか」で行うべきで、択一の選択肢を見て正誤が分かることは、記述式で40字を書けることを意味しません。

再訪の間隔はどう決めるのか

残り期間から逆算します。Cepeda ら(2008)は最適な間隔をテストまでの期間に対する割合として示し、1週間後のテストでは約20〜40パーセント、1年後のテストでは約5〜10パーセントと、期間が延びるほど割合が小さくなることを報告しました(https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02209.x)。試験まで数か月という行政書士試験の受験生は、この2点の間に位置します。

下の表は、この割合を日数に換算した目安です。3行目は研究が直接報告した値ではなく、本記事による補間である点に注意してください。

試験までの期間最適間隔の割合日数への換算
1週間後約20〜40パーセント(Cepeda et al. 2008)約1〜3日
1年後約5〜10パーセント(Cepeda et al. 2008)約3〜5週間
数か月後上の2点の間(本記事による補間)1〜2週間を起点に調整

間隔をあけること自体の効果は、想起練習と組み合わせたときにも確認されています。Latimier ら(2021)のメタ分析は、間隔をあけた想起練習が集中した想起練習を上回る効果(g = 0.74)を報告しました(https://doi.org/10.1007/s10648-020-09572-8)。また Cepeda ら(2006)は、学習間隔と保持期間が相互に作用して最終テストの成績を左右すること、最大の保持をもたらす間隔は保持期間が延びるほど長くなることを示しています(https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354)。ただしこれらは実験室的な材料での知見であり、割合はあくまで出発点です。教材の難度や既習度で最適値は動くので、2週間あけて再生できなければ短く、余裕で再生できれば長く、という調整を自分のログで行ってください。

一度解けた問題を復習リストから外してよいのか

外すべきではありません。Karpicke & Roediger(2008)は、正解できた項目をその後も再学習し続けた条件では遅延後の再生が改善せず、再テストを続けた条件だけが大きな効果を示したと報告しています(https://doi.org/10.1126/science.1152408)。同じ研究では、参加者自身の成績予測が実際の成績と相関していませんでした。

この2点目は配分にとって致命的です。自己評価が当てにならないなら、「もう大丈夫だと感じた科目」を枠から外す判断は根拠を持ちません。外す判断は感覚ではなく、直近の再生テストの結果という記録に基づかせる必要があります。

形式の選び方にも示唆があります。Rowland(2014)のメタ分析は、初回テストが再認形式のときより再生形式のときにテスト効果が大きくなると報告しています(https://doi.org/10.1037/a0037559)。行政書士試験でいえば、5肢択一を眺め直すより、条文の要件を白紙に書き出すほうが同じ枠から得られるものが大きいということです。記述式の練習が択一の底上げにもなる方向だと考えれば、枠の使い方としては効率がよい。

どこまで回すかについては、Rawson & Dunlosky(2011)が、初回学習で3回正解できるまで想起練習を行い、その後に間隔をあけて3回再学習する組み合わせを、持続性と効率の観点から推奨しています(https://doi.org/10.1037/a0023956)。同研究は、初回学習の基準を上げる効果が再学習を重ねるにつれて小さくなる(劣加算的である)ことも報告しており、初回に完璧を求めて時間を溶かすより、再訪の回数を確保するほうが枠の使い方として合理的だと読めます。

なお、テスト形式が常に有利なわけではありません。Roediger & Karpicke(2006)では、最終テストが5分後の場合は繰り返し学習のほうが成績がよく、2日後・1週間後の遅延テストで想起練習が上回りました(https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x)。直後の確認テストで手応えがないことは、配分を間違えた証拠にはなりません。

復習枠の配分例と、外す順序

配分の原則は、足切りのある基礎知識科目に最小限の固定枠を先に確保し、残りを法令等の再生練習に寄せることです。基礎知識には満点の40パーセントという下限があるため枠をゼロにできず、一方で出題は14題と小さいので、増やしても伸びしろが限られます。以下は週あたりの復習枠を10コマと仮定した配分例です。

ブロック週の枠(10コマ中)主な練習形式枠を減らす条件
法令等・行政法分野4コマ白紙への再生+択一直近2回の再生が連続で正解
法令等・民法分野3コマ要件と効果の書き出し直近2回の再生が連続で正解
法令等・その他分野1コマ択一の誤答のみ減らさない(すでに最小)
基礎知識2コマ文章理解+個人情報保護減らさない(足切り枠)

外す順序は、上の表の「枠を減らす条件」に合致したブロックから、1コマずつです。丸ごと外さずに1コマ残すのは、Karpicke & Roediger(2008)が示したとおり、正解できた項目でも再テストを続けた条件だけが遅延後の成績を保ったためです。

この配分の運用で一番面倒なのは、「どの項目を何日前に、どの形式で再生できたか」を残す作業です。メモハック(MemoryHack AI)は、教材を撮影すると問題形式に変換し、正解した項目も間隔をあけて再訪リストに戻す設計になっているため、外す判断を感覚ではなく記録で行いたい場合の選択肢になります。

7日間で配分を運用する手順

手順は3段階です。初日に対象と形式を確定し、2日目以降は間隔をずらして再訪し、7日目に配分そのものを見直す。重要なのは、記録を「やった・やらない」ではなく「何日空けて、どの形式で、再生できたか」で残すことです。この記録がないと、枠を減らす判断が自己評価に戻ってしまいます。

  1. 初日:4ブロックそれぞれについて、今週扱う項目を確定する。項目数は再生できる量に絞り、増やさない。
  2. 初日:各項目に練習形式を割り当てる。択一で足りるものと、白紙への再生が必要なものを分ける。
  3. 2〜3日目:初日に再生できなかった項目だけを、短い間隔で1回戻す。
  4. 4〜5日目:初日に再生できた項目を含めて、ブロック単位で1周する。正解した項目も外さない。
  5. 6日目:記述式の形式で、行政法分野と民法分野から各1問だけ、40字程度で書き出す。
  6. 7日目:記録を見て、「直近2回の再生が連続で正解」に達したブロックから1コマだけ枠を移す。
  7. 7日目:移した先は、直近1週間で最も再生率が低かったブロックにする。基礎知識の2コマは動かさない。

この7日を1サイクルとして回すと、配分は毎週わずかに動きます。動かす根拠が記録である限り、直前期に「どれかが回らなくなる」事態は、事故ではなく選択になります。

よくある質問

基礎知識科目は後回しにしてよいですか

後回しにはできますが、枠をゼロにはできません。行政書士試験の合格基準には基礎知識科目で満点の40パーセント以上という科目別の基準が含まれており、法令等をどれだけ伸ばしても、この線を割れば合格になりません。出題は14題と小さいため増やしても伸びしろが限られる一方、下限を割らないための最小限の固定枠を毎週確保するのが現実的です。なお基準は年度により変わりうるため、最新の基準は公式発表で確認してください。

記述式の対策はいつ始めるべきですか

択一が仕上がるのを待たずに、少量を早期から並行させるのが合理的です。Rowland が2014年に発表したメタ分析は、初回テストが再認形式のときより再生形式のときにテスト効果が大きくなると報告しています。記述式は白紙からの再生を求める形式なので、そこで扱った知識は択一形式でも取り出しやすくなる方向に働くと考えられます。週に1〜2問、40字程度で書き出すだけでも、同じ復習枠から得られるものは変わります。

復習の間隔は研究が示した割合どおりにすべきですか

出発点として使い、自分のログで調整してください。Cepeda らが2008年に報告した最適間隔の割合は、テストまでの期間が1週間なら約20〜40パーセント、1年なら約5〜10パーセントで、期間が延びるほど小さくなります。ただしこれは統制された材料での値であり、教材の難度や既習度によって最適値は動きます。設定した間隔で再生できなければ短く、余裕で再生できれば長く、という調整を実際の再生結果に基づいて行うのが確実です。

何度やっても解けない問題はどう扱えばよいですか

配分の観点では、その問題単体ではなく前提知識に枠を移すのが先です。Rawson と Dunlosky が2011年に報告した知見では、初回学習で3回正解できるまで想起練習を行い、その後に間隔をあけて3回再学習する組み合わせが、持続性と効率の両面から推奨されています。裏を返せば、初回の3回正解に到達しない項目は再学習の前段階にあるということで、間隔をあけて回す対象としてはまだ早い状態です。分野の基礎に戻すか、その週の対象から外して枠を他へ回す判断になります。

参考文献