なぜ混ぜて解くと定着するのか——インターリービングの仕組みと、効く教材・効かない教材
公開: 約13分メモハック開発者
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分野ごとにまとめて解いているときはスラスラ進むのに、模試になると「どの解法を使う問題なのか」が分からなくなる。これは理解不足の証拠ではなく、練習の並べ方が生んだ症状です。問題の種類を交ぜて解くインターリービング(交互練習)は、まさにその判断力を鍛えるために設計された配列で、中学数学の無作為化比較試験では1か月後の抜き打ちテストで交互練習群61%、ブロック練習群38%(d = 0.83)という差が報告されています(Rohrer et al., 2020, https://doi.org/10.1037/edu0000367)。ただしこの手法は、どんな教材でも効くわけではありません。この記事では、混ぜることがなぜ効くのか、どこまで混ぜるべきか、そしてどこで逆効果になるのかを、DOIで確認できる出典だけに絞って整理します。
インターリービングとは何を混ぜる練習なのか
インターリービングは、同じ種類の問題を連続させず、複数の種類を入り混じった順序で解く練習配列を指します。教材や勉強時間を増やす手法ではなく、並べ方だけを変える介入である点が重要です。Foster et al. (2019) は、連続する2つの例題が同じカテゴリーにならないという制約として定義しています(https://doi.org/10.3758/s13421-019-00918-4)。
対になる配列がブロック練習です。テキストの第3章を読んだ直後に第3章の問題だけを20問解く、という一般的なやり方がこれにあたります。ブロック練習では、問題を読む前から使う解法が分かっているため、実際には「解法を当てはめる作業」だけを練習していることになります。本試験で必要なのは、問題文から解法を選ぶ判断そのものです。基本的な進め方はインターリービングの基本でも扱っています。
なぜ混ぜると定着が高まるのか
有力な説明は2つあります。1つは識別対比で、似た種類の問題が近くに並ぶことで違いに注意が向き、どの解法を使うかの判断が育つという説明です。もう1つは分散練習で、同じ種類の問題の間隔が空くこと自体が記憶を強めるという説明です。どちらが主役かは、まだ決着していません。
Brunmair & Richter (2019) のメタ回帰は、カテゴリー間で似ていて、カテゴリー内では似ていない教材ほど効果が大きいことを示し、注意の配分に基づく説明と整合すると報告しています(https://doi.org/10.1037/bul0000209)。一方 Foster et al. (2019) は、体積を求める問題を使い、標準的な交互練習・ブロック練習・無関係な課題を挟む遠隔交互練習の3条件を比較しました。標準的な交互練習はブロック練習を上回りましたが、遠隔交互練習は上回らず、著者らは分散練習仮説を支持すると述べています。少なくとも数学の手続き学習では、解釈が分かれていると理解しておくのが正確です。
なお、間隔を空けて解き直すこと自体の効果や、思い出す行為が記憶を強める効果は、それぞれ独立に検討されてきました(Cepeda et al., 2008, https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02209.x/Roediger & Karpicke, 2006, https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x)。想起そのものの仕組みはテスト効果はなぜ効くのかで詳しく扱っています。
効果はどの教材でも同じなのか
同じではありません。59件の研究を統合したメタ分析の全体的な効果量は g = 0.42 ですが、これはあくまで全体平均であり、教材の種類によっては符号すら変わります。絵画などの視覚教材で最も大きく、単語の学習ではむしろブロック練習のほうが有利でした(Brunmair & Richter, 2019)。
次の表は、同メタ分析が報告した教材別の効果量です。値が正なら交互練習が有利、負ならブロック練習が有利を意味します。
| 教材の種類 | 効果量(Hedges' g) | 読み取り |
|---|---|---|
| 全体平均(59件) | 0.42 | 中程度の効果 |
| 絵画・視覚教材 | 0.67 | 最も大きい |
| 数学の課題 | 0.34 | 小さいが正 |
| 説明文・味覚 | 有意でない | 判断できない |
| 単語 | -0.39 | ブロック練習が有利 |
資格試験の学習に引き写すなら、「判例と条文の適用を見分ける」「類似した制度を区別する」といった判断を伴う領域では交互練習が向き、単語や用語の初回暗記ではまとめて覚えたほうが速い可能性がある、という読み方になります。すべてを混ぜるのではなく、混ぜる対象を選ぶことが要点です。
教室の実験ではどれくらい差がつくのか
中学数学の教室で行われた2つの実験では、いずれも遅延テストで明確な差が出ています。特に重要なのは、両群が同じ練習問題を解いており、増えたのは配列の複雑さだけだという点です。時間を増やして得た差ではありません。
次の表は、条件をそろえた2つの実験の設計と結果を並べたものです。
| 研究 | 設計 | テスト時期 | 結果 |
|---|---|---|---|
| Rohrer et al. (2015) | 7年生126名、同じ練習問題を3か月にわたり配列のみ変更 | 復習後1日と30日 | 即時 d = 0.42、遅延 d = 0.79 |
| Rohrer et al. (2020) | 7年生の54クラス、4か月間の事前登録済み無作為化比較試験 | 復習の1か月後、抜き打ち | 交互61%対ブロック38%、d = 0.83 |
Rohrer et al. (2015) では、即時テストの差(d = 0.42)より30日後の差(d = 0.79)のほうが大きくなりました(https://doi.org/10.1037/edu0000001)。交互練習の利得は練習直後ではなく、時間が経ってから現れます。逆に言えば、当日の演習の出来だけで手法を評価すると、効いている方法を捨ててしまいます。
今日の勉強でどこから混ぜ始めるか
まず、全部を混ぜないことです。今週学んだ2〜3の論点だけを1セットにし、同じ種類が連続しないよう並べ替えて15〜20問解きます。答え合わせでは正誤よりも「なぜその解法・条文を選んだか」を確認します。鍛えたいのは判断だからです。
手順は次の4段階に分けられます。第1に、直近で学んだ論点を2〜3個選ぶ。範囲全体ではなく、混同しやすいもの同士を組みます。第2に、種類が隣り合わないように問題を並べ替える。第3に、1問ごとに解法を口に出してから解く。第4に、間違えた問題は解説を読んで終わりにせず、「どの手がかりを見落としたか」を1行書き残します。この1行が、次に同じ判断を迫られたときの手がかりになります。
紙の問題集で並べ替えを手作業でやると、それ自体が負担になって続きません。メモハック(MemoryHack AI)は、教材から作った問題を復習期日と種類の重なりを見ながら自動で並べ替えるので、混ぜる作業ではなく判断の練習に時間を使えます。
混ぜる単位と間隔はどう決めるか
混ぜる単位は、解法や条文の適用judgmentが分かれるレベルに合わせます。細かすぎると単なるランダム化になり、粗すぎると実質ブロック練習に戻ります。間隔は、本番までの期間が長いほど広げるのが目安ですが、最適値には個人差と教材差があります(Cepeda et al., 2008)。
次の表は、混ぜる設計を決めるときの判断材料です。
| 決めること | 迷ったときの初期設定 | 理由 |
|---|---|---|
| 混ぜる論点の数 | 2〜3個から | 多すぎると想起できず、練習が作業に戻る |
| 1セットの問題数 | 15〜20問 | 各論点が数回ずつ再登場する最小規模 |
| 同種の再登場 | 3問以上あけて | 連続すると解法の選択が起きない |
| ブロック練習の扱い | 新規論点の初回だけ | 手順そのものを知らない段階では混ぜても選べない |
| 見直す頻度 | 週1回、遅延テストの結果で | 当日の正答率では判断できない |
初めて触れる論点は、まずブロック練習で手順を通す段階が要ります。選択肢として存在しない解法は選べないためです。手順が一通り入った時点で、混ぜる側へ移します。
手応えの悪さを判断材料にしない
交互練習の最中は正答率が下がり、ブロック練習より効いていないように感じます。しかしこの感覚は、後の成績の予測として当てになりません。Kornell & Bjork (2008) の実験では、参加者は集中提示のほうが効果的だと評価しましたが、自分のテスト成績は逆を示していました(https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02127.x)。
社会人学習者にとって、この乖離は現実的な問題です。可処分時間が限られていると、手応えのある方法に流れやすくなります。対策は、判断材料を当日の感触から遅延テストの結果に移すことです。週末に、1週間前の範囲を混ぜた小テストで確認する。そこで解けたかどうかだけを、手法の採否を決める材料にします。
よくある質問
インターリービングとブロック練習は、どちらを選ぶべきですか
学習段階で使い分けます。手順をまだ知らない新規論点は、まずブロック練習で一通り通します。手順が入った後、類似した論点と混ぜて解く段階に移すと、解法を選ぶ判断が練習できます。メタ分析では全体の効果量は Hedges' g = 0.42 でしたが、単語の学習では g = -0.39 とブロック練習が有利だったため、教材によって選び分けるのが妥当です。
混ぜると正答率が下がりますが、やり方が間違っていますか
交互練習では練習中の正答率が下がるのが通常です。中学数学の実験では、即時テストの効果量 d = 0.42 に対し30日後は d = 0.79 と、差が後になって広がりました。当日の出来ではなく、1週間後に同じ範囲を解けるかで判断してください。ただし正答率が極端に低い場合は、混ぜる論点の数が多すぎるか、手順が未習得の可能性があります。
資格試験の勉強では、何と何を混ぜればよいですか
混同しやすい論点同士を組むのが基本です。似た条文や制度、適用条件が近い判例など、本番で「どちらの話か」を判断させられる組み合わせが向いています。逆に、まったく無関係な科目を混ぜても、判断を鍛える効果は期待しにくくなります。メタ分析でも、カテゴリー間で似ていてカテゴリー内で似ていない教材ほど効果が大きいと報告されています。
1日にどれくらいの量を混ぜればよいですか
初期設定としては、論点2〜3個を1セットにして15〜20問程度が扱いやすい規模です。各論点が数回ずつ再登場し、同じ種類が3問以上あく配列になります。時間が取れない日は問題数を減らし、混ぜる論点の数は維持してください。数を減らすとブロック練習に近づき、判断の練習にならなくなります。
参考文献
- Brunmair, M., & Richter, T. (2019). Similarity matters: A meta-analysis of interleaved learning and its moderators. Psychological Bulletin. https://doi.org/10.1037/bul0000209
- Rohrer, D., Dedrick, R. F., & Stershic, S. (2015). Interleaved practice improves mathematics learning. Journal of Educational Psychology. https://doi.org/10.1037/edu0000001
- Rohrer, D., Dedrick, R. F., Hartwig, M. K., & Cheung, C.-N. (2020). A randomized controlled trial of interleaved mathematics practice. Journal of Educational Psychology. https://doi.org/10.1037/edu0000367
- Foster, N. L., Mueller, M. L., Was, C., Rawson, K. A., & Dunlosky, J. (2019). Why does interleaving improve math learning? The contributions of discriminative contrast and distributed practice. Memory & Cognition. https://doi.org/10.3758/s13421-019-00918-4
- Kornell, N., & Bjork, R. A. (2008). Learning concepts and categories: Is spacing the enemy of induction?. Psychological Science. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02127.x
- Cepeda, N. J., Vul, E., Rohrer, D., Wixted, J. T., & Pashler, H. (2008). Spacing effects in learning: A temporal ridgeline of optimal retention. Psychological Science. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2008.02209.x
- Roediger, H. L., III, & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science. https://doi.org/10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
- Birnbaum, M. S., Kornell, N., Bjork, E. L., & Bjork, R. A. (2013). Why interleaving enhances inductive learning: The roles of discrimination and retrieval. Memory & Cognition. https://doi.org/10.3758/s13421-012-0272-7